緑内障のQ&A
[最終更新日:2020.06.13]
著者
上江田信彦
医学博士
日本眼科学会認定 眼科専門医
新着記事 (2020/06/13更新)
目次
緑内障に気付かないのはなぜですか?視野の変化に気付かないのはどうしてですか?
Q. 緑内障とはどんな病気なのですか?
A. 一般的に眼圧が高くなると緑内障になると考えられています。
眼圧は目の中にある房水という透明な液体の循環が悪くなると高くなります。房水は目の中で作られ、角膜や水晶体といった透明な組織に栄養や酸素をあたえるといった血液のはたらきをする液体です。房水は虹彩(ちゃいろめ)と強膜(しろめ)が接する部分にある排水管から目の外の血管に向かって排出されます。この排出機能がなんらかの原因で悪くなると房水が目の中にたまるために眼球内の圧力すなわち眼圧が高くなります。眼圧が高くなると、目からものを見たことを脳に伝える神経である視神経を圧迫して傷つけます。
このように視神経が傷つけられることにより視野が狭くなったり、視力が落ちたりするのです。このように眼圧が高くなることにより視神経が傷つけられ、そのためにものを見る力が弱ることを緑内障といいます。
Q.なぜ緑内障に気をつける必要があるのでしょうか?
A. 我が国の成人が失明する原因の第I位は緑内障ですが、適切な治療によって悪化することをおさえることは出来るからです。ただ残念なことに緑内障の患者さんの多くは緑内障に気づかず、適切な医療を受けていません。
Q. なぜ多くの人が緑内障に気づかず、未治療なのですか?
A. 緑内障の多くは慢性の緑内障です。慢性の緑内障は目の痛み、かすみ等の症状がなく視野が狭くなります。視野が狭くなっても初期のうちは反対の目の視野や脳のはたらきによってカバーされます。このため視野が大きく欠けるまでなかなか自分で気づくことはありません。したがって、定期的な検査を受けるようにし、症状が軽いうちに発見して治療することが大切なのです。
Q. なぜ眼圧が高くなるのですか?
A. 眼圧は目の中にある房水という透明な液体の循環が悪くなると高くなります。
目には一定の固さがあります。まぶたの上から目を軽く押さえてみてください。眼球はべこべこではなく、ある程度の硬さがあるのがお分かりになると思います。これは、眼球内を房水が絶えず循環していて、目の固さをちょうどほどよい状態に保っているからです。
房水は茶目(虹彩)の裏側にある毛様体とよばれるところで作られます。毛様体で作られた房水は、黒目(瞳孔)を通り、虹彩の前面を流れて、虹彩(ちゃいろめ)と強膜(しろめ)が接する部分にある排水管(線維柱帯)から目の外の血管に向かって排出されます。
この排出機能がなんらかの原因で悪くなる房水の排出が滞ります。すると目の中の房水が多くなりすぎます。そのために目は空気を入れすぎたボールのように固くなる、すなわち眼圧が上がるのです。
Q. 緑内障になりやすい体質などはありますか?
A. 緑内障には一つの病気ではなく、いくつか種類があります。どのような体質の方がかかりやすいかは緑内障の種類により変わってきます。
▾ 原発開放隅角緑内障になりやすい体質
• 眼圧 眼圧が高いほど原発開放隅角緑内障の患者が多く、原発開放隅角緑内障の患者の眼圧を下げると視野障害の進行が抑えられることが多数の研究で報告されています。
• 加齢 歳を重ねるに従って原発開放隅角緑内障にかかる方が増えてゆきます。
• 眼灌流圧が低い 血圧と眼圧の差を眼灌流圧(眼灌流圧=血圧-眼圧)とよびます。眼圧が同じですと血圧が低いほど眼灌流圧は低くなります。眼灌流圧が低いと視神経の血流が損なわれるため原発開放隅角緑内障が進行しやすくなると考えられています。
• 家族歴 両親や兄弟に緑内障の患者がいる人に原発開放隅角緑内障の患者が多いと報告されています。
• 糖尿病 2型糖尿病の方は視神経の血管をいためるため原発開放隅角緑内障になりやすいと考えられています。
• 近視 近視が強いと視神経乳頭の組織が弱くなるので、原発開放隅角緑内障で視神経をいためやすくなります。
• 片頭痛 片頭痛のある方は視神経の血流を調節する力が弱いため、原発開放隅角緑内障が進行しやすいと考えられています。
▾ 原発閉塞隅角緑内障になりやすい体質
• 加齢 年齢とともに原発閉塞隅角緑内障にかかる方が増えてゆきます。
• 女性 女性は男性よりも原発閉塞隅角緑内障にかかる方が多いです。
• 家族歴 親族に閉塞隅角緑内障の方がいる人には閉塞隅角緑内障の患者が多いと報告されています。
• 遠視 遠視の方はそうでない方に比べて原発閉塞隅角緑内障にかかる方が多いと報告されています。
Q. 視野は年に何回はかる必要がありますか?
A. 視野検査の結果はばらつきが大きいので、視野悪化の進行の判定には最低でも5回の視野測定が必要です。視野悪化の速度は一人一人違いますので、視野測定の間隔も一人一人違います。例えば眼圧が高い方や、視神経乳頭陥凹の拡大が進行している方は視野悪化が進行しやすいので視野測定の間隔を短めにする事があります。
始めて緑内障と診断された場合:新たに緑内障と診断された場合には治療前の視野悪化の進行速度を把握する必要があります。また視野検査に慣れが必要ですので、最初の2年間はできるだけ頻回に測定することが推奨されています。
視野悪化が進行している場合:年6回程度の視野測定が推奨されています。
視野悪化が進行していない場合:年に少なくとも1〜2回の視野測定を行う必要があります。
Q.眼圧が高くなるとどうなるのですか?
A. 目の奥には、視神経乳頭と呼ばれる、視神経線維が百数十万本集まって束になっているところがあります。視神経線維は目から脳へものを見たことを伝えます。緑内障になると眼圧が高くなり、視神経線維が圧迫されるとその数が減り、視神経乳頭のへこみ(視神経乳頭陥凹)が大きくなります。
また、正常眼圧緑内障では、もともと視神経が正常より弱いので眼圧が正常でも障害を受けてしまうと考えられています。眼底の異常はq視野の異常よりも早くあらわれるので、緑内障の早期診断のためにも眼底検査が必要とされています。
Q. 視神経が障害されるとどうなりますか?
A. 視神経が傷害されて視神経線維が減ると視野が狭くなってしまいます。
最初は視野の中で見る力が部分的に弱くなり、かすんで見えるようになります。これが進行すると全く見えない部分(暗点)ができてきます。暗点ができても脳がそれを補正し、視力に影響がないため、気がつかない人がほとんどです。しかし、暗点が大きくなって周辺をおおうようになると、周辺部はかすんでしまって全く見えなくなるため、風景はまるで筒を通してのぞいているように狭くなります。さらに進行すると、しだいに視力も低下して失明にいたることがあります。
緑内障による視野の障害は、現在の医学では回復することはできません。このため、できるだけ初期から治療を始めることにより視野の障害の悪化を予防することが大切です。
Q.緑内障に気付かないのはなぜですか?視野の変化に気付かないのはどうしてですか?
A.緑内障の患者さんのうち非常に眼圧が高い人は目の痛みやかすみを感じます。しかし緑内障の患者さんの多くはそれほど眼圧が高くありません。そのような患者さんは視野異常しか症状がありません。
視野異常は「視野の一部が少しかすむ」という程度から始まります。この段階ではほとんどの人は気がつくことはありません。それは視野の一部のかすみは脳が補正してくれること、そして左右それぞれの目が助け合って視野を補完していることによります。
緑内障の視野異常は日常生活では問題のないことがほとんどです。しかし製図や自動車の運転など、視野の周辺部もよく見えていなければならない場合には思わぬミスをしてしまうことがありますので注意が必要です。
Q.寝る前に目薬を使って大丈夫ですか?
A.たいていの目薬は寝る前に使っても問題はありません。
患者さんにプロスタグランジンの目薬を夜寝る前に使うよう説明すると、「目薬は寝る前に使ってはいけないのではないですか?」と質問されることがあります。確かに目薬の中には
寝る前に使ってはいけないものがあります。例えば結膜炎などに使う収斂剤は結膜を変性することにより、炎症が治るのを促進します。この目薬を寝る前に使うと結膜が変性しすぎてしまい、目を強く刺激してしまいます。
しかし、このような目薬は例外的です。多くの目薬は医師からの注意がない限り、寝る前に目薬を使っても大丈夫です。
プロスタグランジンの目薬を夜に使う理由。
一方、プロスタグランジンの目薬はいつ使っても問題のない薬です。しかしプロスタグランジンの目薬を使うと、数時間は目が充血します。充血しても目に害があるわけではありませんが、人と会うときなどは少し不便だろうと思います。夜に使うと目が充血しても寝ている間に充血はひいてしまいます。だから患者さんにはプロスタグランジンの目薬は夜に使うように説明しています。たまに充血が長く続くために朝に目が赤いままだと相談を受けることがあります。そのような場合は目薬を少し早めに点眼していただいております。
Q.視野検査を上手に受けるためにはどうすればいいですか?
A.
1.検査の前日には十分に休養をとってください。睡眠不足は検査に影響します。
2.検査中は真ん中の光をずっと見つめてください。
3.検査中はリラックスしてください。頑張りすぎはよくありません。
4.検査中に姿勢がつらくなったら検査員に声をかけてください。
2.と3.を両立するのは大変と思われるかも知れませんが、ほとんどの患者さんは慣れでなんとかなります。
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