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糖尿病網膜症について

[最終更新日:2022.11.30]

糖尿病にかかった方は眼科への通院が必要です

血糖値が長期間高くなり続けると全身の血管がいたんできます。眼の中の光を感じる神経の膜(網膜)の血管もいたんできます。これを糖尿病網膜症とよびます。

糖尿病網膜症は日本の失明原因の第3位です。糖尿病網膜症によって,毎年約二千人が社会的に失明しているといわれています。

また,失明には至らなくても視力が低下すると,薬が見分けにくくなったり,ウォーキングなどの運動がしにくくなったりして糖尿病の治療に支障が出ることがあります。

糖尿病網膜症があると,脳卒中や心筋梗塞など生命にかかわる病気がおこりやすくなります。このため内科主治医にとっても糖尿病網膜症の状態を把握することは非常に大切です。

当院では眼底精密検査,OCT,OCTアンジオグラフィーを使用して糖尿病網膜症の状態を把握します。検査結果は連携手帳などを使って内科主治医にフィードバックします。

当院では糖尿病網膜症に対するレーザー治療を行っております。抗VEGF剤の注射や硝子体手術は専門機関に紹介しております。

 

視力が良くても眼底検査は必要です

 

糖尿病網膜症になるとすぐに見えにくくなってしまうと思われがちですが,糖尿病網膜症の患者さんのうち3分の2以上は見えにくくなっていません。

見えにくくなっていない人も眼底検査を受けていただかないと糖尿病網膜症を見落としてしまうことがあります。このため,眼科や内科で適切な治療を受けられないために,失明したり,命にかかわる合併症がおこったりする危険性が高くなります。

 

定期的な眼底検査が必要な理由

 

眼底検査は検査のときも検査のあともまぶしくて結構大変です。また「異常なし」といわれると安心してしまうこともあるでしょう。

しかし,糖尿病の患者さんは現在糖尿病網膜症がなくても25人に1人は1年以内に網膜症がおこる可能性があります。また糖尿病網膜症の患者さんの50人に1人は1年以内に網膜症が悪化する可能性があります。

これらのことから糖尿病網膜症がおこったり,悪化したりするのを見逃さないためには定期的な眼底検査が必要だといます。

 

眼底検査の間隔


眼底検査の間隔はだいたい以下の通りです。

網膜症なし 毎年
単純糖尿病網膜症  半年ごと
増殖前糖尿病網膜症 隔月
増殖糖尿病網膜症 毎月

 

以上の間隔はあくまでも目安であり,患者さんの状態に応じて検査の間隔を調整する必要があります。

例えば,高血糖状態が続く場合は網膜症が悪化する可能性が高くなりますので,検査の間隔を短くする必要があります。

特に,長期間にわたって高血糖状態が続いた患者さんで,すでに糖尿病網膜症にかかっている方は糖尿病の治療を開始したあと糖尿病網膜症が悪化しやすいことが知られています。

このような場合には糖尿病の悪化を見逃さないために検査の間隔を短くする必要があります。

また糖尿病黄斑浮腫がある場合には視力が低下する可能性がありますので,単純糖尿病網膜症であっても2ないし3ヶ月に一度の検査が必要になることがあります。
糖尿病黄斑浮腫で視力が落ちている場合には毎月検査する場合があります。

 

生活上の注意点

内科の治療により血糖,血圧,コレステロール,中性脂肪をさげることが大切です。また食事療法,運動療法,禁煙などにより生活習慣を改善することも重要です。

糖尿病網膜症の病期

単純網膜症

網膜の血管がいたむと,血管から水分や赤血球がもれ出します。このため眼底に出血や浮腫がおこります。

治療

内科の治療のしっかり受けましょう。眼科の治療は特に必要ありません。

増殖前網膜症

単純網膜症が悪化すると毛細血管がつまり始めます。

毛細血管がつまると、周囲の毛細血管や静脈が変形したり,網膜が白く濁ったり(軟性白斑)します。

治療

網膜の毛細血管がつまった部分にレーザーを当てる治療です。新生血管が発生してくるのを予防したり,すでに発生している新生血管を退縮させたりするのが目的です。

毛細血管がつまっている部分が広い場合には網膜全体にレーザーを当てることもあります。点眼麻酔で行い,入院は必要ありません

レーザー治療はまぶしくていたがある治療です。しかしレーザー治療をしっかり受けないと視力が落ちる可能性が高くなります。

ですからレーザー治療は最期までしっかり受けること、そして何よりもレーザー治療が必要なまでに網膜症を悪化させないことが大切です。

増殖網膜症

無血管野が広がると,新しく血管が生えてきます。これを網膜新生血管とよびます。網膜新生血管は網膜剝離や,眼の中の大きな出血である硝子体出血を起こします。

治療

広範囲にわたって網膜にレーザー治療を行う必要があります。また網膜剝離や硝子体出血が起きた場合には、硝子体手術とよばれる手術をする必要があります。


糖尿病黄斑浮腫

眼球の一番奥の網膜には光を感じる細胞がたくさんあり,ものを見える力が特に強い部分があります。これを黄斑とよびます。

糖尿病黄斑浮腫は網膜の血管がいたんだために,血管内の水分が血管外にもれ出すことによりおこります。糖尿病黄斑浮腫がおこると視力が低下します。

治療

糖尿病黄斑浮腫には眼内への抗VEGF剤の注射が有効です。場合によってはレーザー治療やステロイド剤の注射を行うことがあります。

 

関連記事

 

眼底健診の意義

眼底検査についてのお願い

 

参考文献

糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版)

Diabetic Retinopathy Preferred Practice Pattern

糖尿病診療ガイドライン 2019 8.糖尿病網膜症

 

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