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眼底健診の意義

[2019.09.22]

[最終更新日:2020.04.28]

著者

上江田信彦

医学博士

日本眼科学会認定 眼科専門医

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あなたの健康管理のためには定期的に健康診断を受ける事が大切です。今回はこれから健康診断を受けられる方、健康診断で眼底の異常が見つかった方のために、眼底検査の意義と眼底検査で見つかることが多い病気について説明していきたいと思います。

目次

眼底健診の意義

全身の病気

 高血圧症

 糖尿病

眼底疾患 

 緑内障

 加齢黄斑変性

img_symptom_001参天眼底

眼底検査の意義

健康診断では眼底の観察をするためには眼底の写真(眼底写真)を撮影します。眼底とは眼球内部で、網膜のある部分のことです。網膜とは眼底にある光を感じる神経でできた膜のことです。眼底は身体の中で毛細血管を肉眼で見ることができる唯一の場所です。網膜の毛細血管を観察することにより全身の血管の状態を知ることができます。このことにより、高血圧や動脈硬化、糖尿病など全身の血管に異常が起こる病気の状態を知ることができ、循環器疾患で死亡するリスクがわかります。このことから循環器疾患の予防と早期発見を目的とする特定健診にも採用されています。また眼底にある病気の早期発見にも役立ちます。

 

全身の病気

眼底検査が有用な全身の病気には高血圧症と糖尿病があります。

高血圧症

高血圧症の治療方針を決めるにあたって高血圧症による網膜の血管の変化を評価することは重要です。これは高血圧症により網膜の血管に強い変化が起こると脳卒中、狭心症、心筋梗塞などの循環器疾患により死亡するリスクが高くなるからです。

動脈硬化:網膜の動脈に動脈硬化がある場合、脳卒中、狭心症、心筋梗塞などの循環器疾患により死亡するリスクが正常に比べて最大2倍程度まで高くなります。

眼底出血:眼底出血があると脳卒中、狭心症、心筋梗塞などの循環器疾患により死亡するリスクが正常に比べて2倍以上高くなります。このため高血圧症による眼底出血(高血圧性網膜症)があると、ただちに内服などの治療を始めて血圧を下げる必要があります。血圧を下げることにより眼底出血が治っていることを確認する必要があるため、健診で高血圧による眼底出血があった方は眼科に通院する必要があります。

糖尿病

糖尿病は血液中のぶどう糖(血糖)が増える病気です。血糖値が長期間高いままだと全身の血管がいたみます。眼の奥の光を感じる神経の膜である網膜の血管もいたみ、毛細血管瘤・眼底出血・黄斑浮腫・網膜剥離などをおこします。このように糖尿病により目の中の網膜が障害を受けることを糖尿病網膜症といいます。糖尿病網膜症は血糖値が長期間高い事の証拠となるため糖尿病の診断で重要です。また、糖尿病網膜症になると循環器疾患で死亡するリスクや失明するリスクが高くなります。

糖尿病網膜症になると循環器疾患で死亡するリスクが高くなります。
循環器疾患により死亡するリスクは軽症から中等度の糖尿病網膜症では正常の2.55倍、重症の糖尿病網膜症では正常の5.35倍にそれぞれ上昇します。

糖尿病になると失明するリスクが高くなるため、眼科に定期的に通院する必要があります。
糖尿病網膜症に糖尿病網膜症は日本における失明原因の3位を占めます。糖尿病網膜症による失明を予防するためには早期発見と早期治療が大切です。このため、糖尿病と診断されたら眼科を受診し、少なくとも年1回の定期受診が必要です。 これは眼底写真だけでは網膜の中心部だけしか把握することが出来ないため、網膜周辺部のみに存在する糖尿病網膜症を見逃す危険があ るからです 。このため糖尿病と診断された方は人間ドックの眼底検査を頼らないで、定期的に眼科を通院し散瞳下での詳細な眼底検査を受ける必要があります。

糖尿病網膜症について

眼底疾患 

健診が有用な眼底疾患には加齢黄斑変性、緑内障があります。

緑内障

緑内障とは目と脳をつなぐ神経である視神経の根元(視神経乳頭)でへこみがおこったり(視神経乳頭陥凹)神経が薄くなったり(網膜神経線維層欠損)することにより、徐々に視野が狭くなる病気です。緑内障は日本の失明原因の第1位を占めます。また日本の40歳以上の方の5%は緑内障であるとの研究報告があります。

初期の緑内障は無症状です。また健診の結果 緑内障があった方の90%がこれまでに緑内障と診断されたことがありませんでした。これらのことから眼底健診は無症状の緑内障を発見するために重要と考えることが出来ます。

緑内障で狭くなった視野は現在の医学では治すことが出来ませんので、緑内障が進行する前に早期発見早期治療をすることが大切です。十数年ぶりに健診を受けたところ重症の緑内障で視野も狭くなっている方もいらっしゃいます。緑内障で狭くなった視野を回復することがむずかしいですので、定期的に検診を受けることが大切です。

 緑内障について

 原発開放隅角緑内障と正常眼圧緑内障について

加齢黄斑変性

加齢黄斑変性とは眼底のなかでも最も感度の高い黄斑と呼ばれる部分がいたんでくる病気です。加齢黄斑変性は日本の失明原因の第4位を占め、高齢者の失明原因として重要です。加齢黄斑変性は初期には黄斑の色素に異常がおこり、進行すると異常な血管ができてきて出血などを起こすために視力が低下します。

加齢黄斑変性の初期病変が進行するのを予防するためには禁煙,緑黄色野菜の摂取,血圧コントロール,肥満の解消、禁煙が有効です。特に喫煙は加齢黄斑変性が発症するリスクを 3から4 倍高めると報告されているので,できる限り禁煙する必要があります。

 加齢黄斑変性について

 

参考文献

「眼底健診判定マニュアル」
日本人間ドック学会
https://www.ningen-dock.jp/wp/wp-content/uploads/2013/09/9a0e9dd5b5a9c4b9f151c5b3ad9855c82.pdf

「高血圧と網脈絡膜循環」
日本の眼科 89巻:10 号 P 1362 (2018)

「動脈硬化と糖尿病網膜症」
日本の眼科 89巻:10 号  P1378 (2018)

 

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